【妻の読書日記】『戦場のコックたち』 深緑野分 著

戦場のコックたち 書評

どうも、妻です。

本屋大賞にノミネートされた作家さんを読んでみようと思って、借りてみました。
ノミネート作は予約が多くてすぐに借りられそうになかったので、とりあえずこれを。

『戦場のコックたち』 深緑野分 東京創元社 ISBN 978-4488027506

深緑さんははじめて読みましたが、これは大当たり!

第二次世界大戦時に合衆国陸軍兵士としてドイツに赴くアメリカ人青年ティモシー(ティム)・コールが主人公です。19歳。

おばあちゃん仕込の食いしん坊で特技兵(コック)として働くティムは、同じG中隊コックのエドワード(エド)・グリーンバーグとともに、身近におこる謎を解いていきます。

パラシュートを集める理由、消えた粉末卵、幽霊兵隊の話…。
戦場での謎解きですが、それ自体はいわゆる「日常の謎」とされる物が多いです。

でもそれが、市街地が戦場になるとはどういうことか、軍隊とはどういうところか、人を殺すとはどういうことかをひしひしと感じさせます。
(特技兵はコックですが、兵隊として普通に戦場に出ます。)

読み終わって何より感じたことは、「誰がどの立場になってもおかしくなかった」ということ。

ノルマンディー上陸作戦からはじまる戦場が舞台のこの話は、様々な国・立場の人々が出てきます。
ドイツ軍に占領されつつある近隣の国(フランス、オランダ、ベルギーなど)。
その国々をドイツから救うというアメリカも、ひとつの国としてではなく連合軍として戦います。
何人であっても、ずっとご近所さんで仲ががよくても、明日には殺したいほど憎くなってもおかしくない状況が、そこにはあります。

「僕たちはこの国を救いに来たんだよね?」と主人公がぼやくシーンがあります。
そんなに深刻なシーンではないですが、なんだか響きます。

「あいつ(あの国)は悪、やっつけてハッピーエンド」で済ますのは単純明快で楽ちんですが、そんなに簡単にはいきません。

さてではどうするか。生きている者が考えていかなくてはいけないことだと思います。

かなり残酷な描写もあるので、万人におすすめはできません。
でもぜひ高校生~20代くらいの若い人に読んでほしい。
教科書で勉強した戦争というものが、とてもリアルに我がこととして感じられると思います。

ただ唯一、ラストのエピソードはあんまり好きじゃないかなー。
ちょっとファンタジー寄りになってしまったので。

 

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